映画を観る準備はできている。

映画についてのいろいろな話。

あの子のために、世界など崩れてしまえばいい。「獣の棲む家」

※ネタバレがあります。

 

予告篇

 

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あらすじ

戦火のスーダンからイギリスへ逃れた難民夫婦が、新居に潜む謎の存在によって追い詰められていく姿を描いたNetflixオリジナルのスリラー映画。スーダンの内戦を生き延び、過酷な船旅を経てイギリスに亡命を申請した若い夫婦。条件付きで収容施設から出ることを許された彼らは、役所にあてがわれた古びた住居で新たな生活をスタートさせることに。しかし安堵したのも束の間、新居で奇妙な出来事に次々と襲われ……。監督・脚本は、これまで数々のCM作品を手がけてきたレミ・ウィークス。Netflixで2020年10月30日から配信。(映画.comより引用)

 

感想

 怪物とは、なんだろう。

 人はもうずっと昔から怪物の物語を語ってきた。吸血鬼やゾンビ、狼男にブギーマン…形や性質は違えど、人が怪物について語る時、怪物は常に何かを象徴してはいないだろうか。伝染病への恐怖、子どもを失う悲しみ、そして、「獣の棲む家」に登場する怪物が何の象徴であるかと言うと、それは――奇妙に聞こえるかもしれないが――救いである。

 この映画で、主人公のボルは新しくあてがわれた家でくり返し亡霊を見る。死んでしまった少女の、一緒に船に乗っていたその他の人々の亡霊だ。そして壁の中から聞こえてくる声は言う。ボルが血を流し声の主に身体を捧げれば、死んだ少女は戻ってくると。

 ずっと罪の意識に苛まれてきたボルにとって、これは救いである。自分が罪を償えば、自分がその運命を歪めて母親を呼びながら死んでいったあの少女をよみがえらせることができる。一つの命と引き換えに一人を甦らせるのだ。だって、それくらいの奇跡は起こって当然じゃないか? あんなに惨い目にあって一人死んでいった幼い少女のために、世界は一度くらい、そのルールを歪めてもいいじゃないか? しかしどれだけ彼らの親しい人たちが死のうとその歩みを止めることのない世界は、もちろん、ボルのそんなちっぽけな願いなど聞き入れることはない。世界は崩れない。今までと変わらずに進んでいく。

 リアールがボルの体を乗っ取ろうとしていた怪物を殺すのはつまり、「目を覚ませ、現実を見ろ」と、ボルの頬を平手でたたく行為に等しい。ボル一人が犠牲になろうと、もちろん少女は甦りはしない。無駄に費やされた命が一つ増えるだけだ。だから、たとえどこからともなく母親を呼ぶ少女の声が聞こえてこようとも、ボルとリアールは生きなければならない。罪を犯してまで、少女の運命を歪めてまで、生きのびたのだから。画面に無情に映し出されるとおり、ふたりの家は死んでしまった人たちでいっぱいだ。このすべての死を背負い、馬鹿馬鹿しい歌を歌い、ナイフとフォークで金属の味のする食事をしながら、ふたりはここで生きていく。ここがもう、彼らの家なのだから。

 

ちなみに

 

Youtubeチャンネル、WhatCultureHorrorによる10 Best Horror Movies Of 2020に選出されている。私はこれを見てこの映画を観たくなった。

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Youtubeチャンネル、Watch MojoのTop 10 Best Horror Movies of 2020にも選出されている。

 

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