映画を観る準備はできている。

映画についてのいろいろな話。

永遠に続くものなどない。でも。「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」

「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」を見た。

※ネタバレがあります。

 

予告編

www.youtube.com

 

あらすじ

アメリカのロングセラー小説にほれ込んだモーガン・フリーマンダイアン・キートンが、夫婦役で初共演を果たしたドラマ。ニューヨーク・ブルックリンのアパートメントの最上階に新婚以来暮らしている画家のアレックスと妻のルース。眺めも日当たりも良く、最高の物件なのだが、エレベーターがないため、アレックスも年齢的に5階までの道のりがきつくなってきた。そんな夫を気遣い、この部屋を売ることを決断したルース。妻の考えに承諾したものの、本当は家を売りたくないアレックス。結局、部屋は売りに出すこととなり、内覧希望者も殺到するが、内覧日の前日に愛犬ドロシーが急病にかかり、さらに近所でテロ騒動が勃発。2人は予測不可能なとんでもない週末を迎えることとなる。監督は「リチャード三世」のリチャード・ロンクレイン。(映画.comより引用)

 

感想

 ニューヨークのアパートの売買事情が垣間見えるのだが、興味深かった。まるで株の売買をするみたいな駆け引きが休みなく繰り広げられ、ダイアン・キートン扮するルースの姪で不動産エージェントのリリーがとにかくしゃべりまくる。夫妻が住んでいるのはいくら日当たりがよい最上階だと言ってもエレベーターがない五階建てという、「ううむ、ちょっと迷うね…」となりそうな物件なのに、それでも80万ドルを超える値段がつくのである。なんだかすごい世界だ。

 夫婦がアパートを売りまた新居を見つけようとするごく限られた期間の出来事を描いているが、そのわずかな間にタンクローリーの事故が起こり現場から消えた運転手がイスラム教徒だったためにテロリストとみなされるという事件がテレビで報道されて少しっずつ進展していくさまがさらっと描かれる。この映画の冒頭、モーガン・フリーマンが買い物に出てなじみの店の主と言葉を交わして帰って来るところだけで、ブルックリンがいかに「多様」な街かがわかる。しかしそのいろいろな人々が住んでいる街でも、宗教を理由に一人の青年が簡単にテロリスト扱いされてしまう。数十年前、白人であるルースと黒人であるアレックスの結婚には家族からさえ偏見の目が向けられた。差別はまだ続いているのだ。

 

ちなみに

 ・米国におけるインターレイシャルの結婚について少し調べてみた。1967年、インターレイシャルの夫婦がヴァージニア州を相手取り裁判を起こし、最高裁がインターレイシャルの結婚を禁止する法律は違憲であるとの判決を下す。この時点で16の州にインターレイシャルの結婚を禁止する法律があったが、この判決に伴いそれらの法は効力を失う。

 しかし2009年(2009年⁉)、ルイジアナの治安判事がインターレイシャルのカップルのシビル・ウェディングを執り行うことを拒否、非難を受けて辞職した。

 また、2019年(に、にせんじゅうきゅうねん⁉)、まだ8つの州で、結婚許可証(これがなければ結婚できない)申請時に人種的なバックグラウンドを申告しなければならなかった。2019年、これを定めたヴァージニアの法律が法廷に持ち込まれた結果、違憲判決が出て、ヴァージニア州ではこの法律は効力を失った。

 この映画の作中時間を製作年である2014年とすると、引っ越してきて40年、その時点で結婚2年目らしいので二人が結婚したのが1972年。インターレイシャルの結婚の禁止が違憲であると言う判決が出てから5年後、まだまだ偏見の目は厳しかっただろうと推測できる。

en.wikipedia.org

・アレックスと心を通わせる少女は「パターソン」で書いた詩を見せてくれる女の子らしい。