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このコミュニケーションの時代のディスコミュニケーションについて。「search サーチ」

「search サーチ」を観た。

※ネタバレがあります。

 

予告編

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あらすじ

 物語がすべてパソコンの画面上を捉えた映像で進行していくサスペンススリラー。16歳の女子高生マーゴットが突然姿を消し、行方不明事件として捜査が開始されるが、家出なのか誘拐なのかが判明しないまま37時間が経過する。娘の無事を信じたい父親のデビッドは、マーゴットのPCにログインして、InstagramFacebookTwitterといった娘が登録しているSNSにアクセスを試みる。だがそこには、いつも明るくて活発だったはずの娘とは別人の、デビッドの知らないマーゴットの姿が映し出されていた。「スター・トレック」シリーズのスールー役で知られるジョン・チョウが、娘を捜す父親デビッド役を演じた。製作に「ウォンテッド」のティムール・ベクマンベトフGoogleグラスだけで撮影したYouTube動画で注目を集めた27歳のインド系アメリカ人、アニーシュ・チャガンティが監督を務めた。(映画.comより引用)

感想

 この映画、触れ込み通り、すべてPC画面で構成されている。仲の良い微笑ましい家族の姿を描く冒頭から、失踪した娘の友人関係、SNS、行き先を探るところまで、我々はPC(及びインターネット)にこれほどの痕跡を残しているのだな、と正直少々ぞっとしてしまう。メッセージ、Facebook、Youchat(本当にあるのか?)Instagram、人と繋がる手段はこんなにもたくさんある。リアルで家族にも見せない顔を、リアルで家族に見せられないからこそ、SNS上の「友だち」に見せる、という行為がたやすくできる。今はそういう時代である。しかし多種多様なコミュニケーション手段を見せてはいるが、これはディスコミュニケーションについての映画だ。どれだけSNSで自分をさらし、友だちと繋がり、あるいは同じ家に住んでいる家族と日常的にメッセージのやりとりをしても、真に「繋がれる」かどうかはわからない。SNS上であなたを見ている友だちは実は自分で言っているのとは違う人物かもしれないし、生まれた時から知っていて毎日やりとりをしている相手はあなたの気持ちをわかってくれないかもしれない。マーゴットとのメッセージのやりとりで、デビッドはある一言を言えずに送信をやめる。マーゴットのYouChatの動画に残されていた、亡き妻の誕生日の彼もそうだ。この時デビッドは、本当はその日が何の日なのかについての話をしたかったのに、飲みこんで、当たり障りのないTV番組の話にすり替えているように見える。それを見たマーゴットも、失望した顔はすれど、死んでしまった母親の話をしようとはしない。キム親子のディスコミュニケーションは、このように、それぞれに言葉を飲みこんでしまったことに由来する。そして失踪したマーゴットともう一度繋がるために必要なのは、飲み込まれた言葉だ。もう一度彼女とコミュニケーションをとるために、今度こそデビッドは諦めない。そしてラスト、彼は吐き出すのだ。あの時どうしてもわが子に送ることのできなかったその一言を。

 

好きなシーン

・ネット上に亡くなった人の動画・写真をアップロードするサービスのための素材を選んでいて、デビッドは娘を理解できていなかったし救えなかった自分を、幼いマーゴットが「最高のパパ」と呼んでいる動画だけ削除し、他は全部アップロードする。自分は「最高のパパ」なんかじゃなかったという自責の念と、大事な娘の動画、写真を選ぶことなんてできないという愛情と…

 

ちなみに

 ・監督アニーシュ・チャガンティの新作“RUN”も不穏で面白そうである。

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・続編の製作が進行中の本作だが、続編ではまったく異なるキャラクターの物語が描かれるそうで、監督も本作で編集チームにいたウィル・メリックとニック・ジョンソンになるそうである。

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