映画を観る準備はできている。

映画についてのいろいろな話。

偽りだらけのこの世界で、たった一つの真実。「新しき世界」

「新しき世界」を観た。

※ネタバレがあります。

 

 

予告編

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あらすじ

 

ラスト・プレゼント」のイ・ジョンジェ、「オールド・ボーイ」のチェ・ミンシク、 「甘い人生」のファン・ジョンミンが豪華共演し、韓国で470万人を動員した大ヒット作。韓国最大の犯罪組織に潜入捜査して8年がたつ警察官ジャソンは、自分と同じ中国系韓国人で組織のナンバー2であるチョン・チョンが自分に対して信頼を寄せていることを知り、組織を裏切っていることに複雑な思いを抱く。しかし、警察の上司カン課長の命令には従うしかなく、葛藤する日々を送っていたある日、組織のリーダーが急死。後継者争いが起こる。カン課長はその機に乗じて組織の壊滅を狙った「新世界」作戦をジョンソンに命じるが……。(映画.comより引用)

 

感想

 イ・ジャソンは偽りの世界で生きている。警官であることを隠し犯罪組織の一員として生き。警察の犬であると疑われて暴行を受け殺される犯罪組織の男を見殺しにし。(本人は知らないが)自分の子を妊娠している妻でさえ警察の監視員であり。カン課長が創り上げジャソンを巻き込んで進む「新世界プロジェクト」という大きな車の前では、ジャソンはたかがちいさな歯車に過ぎない。しかしその偽りの世界にたった一つ本物が混じっている。それがチョン・チョンとの友情だ。

 チョン・チョンはジャソンに会うたび「ブラザー」と呼ぶ。それは信頼の証しだ。親愛のしるしだ。ジャソンの正体を知り、警察の連絡係と組織内部に入りこんだ警察の犬を惨たらしく始末した後でも、それは変わらない。ジャソンは彼のブラザーであり、彼はジャソンのブラザーだ。カン課長はジャソンを利用するだけ利用する。その姿には、部下の最期の頼みを聞いて禁煙し、タバコを断る場面には、しかし悲哀が漂っている。大義のために自らの創り出した「新世界プロジェクト」の前でちいさな歯車に過ぎないのは、彼も、惨たらしく殺された彼の部下たちも変らない。カン課長は歯車としての役目をまっとうしようとした。彼にとってそれは、ジャソンをプロジェクトに必要なだけ働かせることを意味した。だからジャソンにとってチョン・チョンがそうであったもの、彼のブラザーにはなれなかった。チョン・チョンにとってジャソンは、あくまでも一緒に鉄砲玉として敵に突っ込んでいった友であり、組織よりも守るに値する者であり、死を迎える時そばにいてほしいたった一人だったからだ。

 ブラザー。それはまるで呪いだ。チョン・チョンが何かと構ってくるのに、捜査対象と距離を取らねばと自らに言い聞かせるようにジャソンはそっけなく対応する。そんなジャソンにくり返し発せられるその言葉は、しかし死にゆく男の口から発せられた時、愛の言葉になる。ブラザー。強くなれ。強く生きろ。これまで運命に翻弄されるばかりだったジャソンが、この映画で自ら動き出すのはここからだ。邪魔者を消し。真実を葬り。帰る場所をなくし。自分の本当の姿を知っていたたぶんたった一人の人を失ったまま、ジャソンは高みに上る。どうせそれも長く続きはしない。滅ぼされてもまた別の誰かがのし上がる、ここはそういう世界だ。しかし今はここが彼の居場所だ。ここは獣の世界であり、強くなくては生きていけず、彼は生きていかなければならない。ブラザーがそう言ってくれたのだから。

 

ちなみに

・ラスト近くの暗殺に使われたタクシーの運転手がどうなったのか気になるところである。

 

・イ・ジャソン役イ・ジョンジェとチョン・チョン役ファン・ジョンミンが再共演する”Deliver Us From Evil(英題)”が気になるところである。

IMDBページ↓

www.imdb.com

予告編↓(英語字幕あり)

www.youtube.com

IMDBのあらすじと予告編を見ると、殺し屋ファン・ジョンミンが自らと関係のある誘拐事件を解決すべくタイへ向かい、自分が殺した男のきょうだいに追われていると気づく、という話らしい。