※ネタバレがあります。
予告編
日本語の予告編は見つけられなかった。英語の予告編はあったけれど、けっこういいシーンを見せてしまっているため、見ない方がいいんじゃないかと思います。
あらすじ
カメラマンのアーロンは山中の家で一日撮影するだけで高額の報酬をもらえるという仕事を受ける。依頼主ジョセフは病気のため余命いくばくもなく、まだ生まれていない子どものため自分の映像を残したいのだと言うが…
感想
この映画、低予算なのだろうな、と思う。監督パトリック・ブライスはアーロン役で出演もしていて、脚本も彼とジョセフ役のマーク・デュプラスが担当。というか、IMDB情報だけれども、二人の会話はだいたいアドリブらしい。主な撮影場所はアーロンが招かれるジョセフの「別荘」、別荘のある山、アーロンの家、ダイナー、くらいだし、画面に映るのはこのアーロンとジョセフの二人だけ。見るからに、「わかるよ…お金、ないだろ…?」という感じなのだ。しかし、もちろん、我々映画ファンならようくわかっているように、お金があれば面白い映画が撮れるわけではないし、お金がなくても面白い映画は撮れる。「クリープ」はそれを証明している。
ジョセフがね。ものすごく怖いんですよ。
ジョセフは、「13日の金曜日」のジェイソンや「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスのように、10メートル先からでも明らかに近寄ってはいけないことがわかる、現実離れした悪役ではない。たとえば「ヘンリー ある連続殺人鬼の記録」のヘンリーのような、「ウルフクリーク 猟奇殺人谷」のミック・テイラーのような、一見普通に見えて、その辺にいそうな人だ。その人が、話しているうちに、少しずつ少しずつ、「実は関わってはいけない類の人」だったことがわかっていく。
私が一番怖かったのは、夜、山荘のベランダで二人が話すところだ。アーロンが懸命に話をしている途中で、ジョセフがいきなり走り出す、そのタイミング。これは実際見てもらわないことにはわからないだろう。ジョセフはこの後もっと厭ーな、異常な行為を行うのだが、暴力的とは言えないこのシーンが、ジョセフの異常性をもっともよく表していたと思う。
たとえば殺人鬼が人体を切り刻むとか、モンスターが襲ってくるとか、そういうわかりやすい、派手な恐怖ではない。この映画に描かれているのは、「アパートの隣りの部屋に客が来るところは見るけど帰るところは見たことがない」「三日連続で帰り道に同じ人とすれ違っているような気がする」みたいな、地味で現実にありそうな、あなたの隣りでも起こりそうな、そういう恐怖だ。その手のホラー映画が好きな人は、まさにCreep(ぞっとさせる奴)なマーク・デュプラスに目を奪われてほしい。
ちなみに
・続編「クリープ2」も制作されており、こちらもネットフリックスで観られる。
・こういう動画で紹介されたのを見てこの映画を知りました。
Honorable mentionにある「ヴェロニカ」もネットフリックスで観られるらしい。
・ジョセフ役マーク・デュプラスは「ブルージェイ」という映画にも出ている。大人になってから再会した高校時代の恋人同士の話。共演はサラ・ポールソン。デュプラスは脚本も担当。これが予告編だが、あ、あれ、デュプラスさんが…素敵…?(おまえ失礼な)
※ネットフリックスで観られます。