映画を観る準備はできている。

映画についてのいろいろな話。

「カルト教団は怖い映画」かと思いきや「アポストル 復讐の掟」

 

※ネタバレがあります。

 

 

予告編

普通に見られるのだが、アノ要素は知らない方がいいかもな…というところが映っているので貼りません。

 

あらすじ

ザ・レイド」のギャレス・エバンスが監督・脚本を手がけ、妹を救うためカルト教団に潜入した男の戦いを、バイオレンス描写を散りばめながら描いたサスペンススリラー。1905年。トーマスは身代金目的でカルト教団に誘拐された妹を救うため、信者を装って孤島へ潜入する。その教団は、預言者マルコムによる指導のもと凄惨な拷問や処刑を繰り返していた。自らも命の危機にさらされながら、妹の行方を捜すトーマスだったが……。主演は「美女と野獣」のダン・スティーブンス。共演に「ボヘミアン・ラプソディ」のルーシー・ボーイントン、「アンダーワールド」のマイケル・シーン。(映画.comより引用)

 

感想

 カルト教団から身内を取り戻すため潜入を試みる主人公…と聞くと、「あっ身内が実は完全に洗脳されてて教団の手先になって主人公を裏切るヤツ!」とか「神の教えに従って信者が恐ろしいことをしでかすヤツ!」とか思わないだろうか。私は思った。しかしこの映画、実際に見てみると思ったのとは違う。主人公が救い出しに行く妹はカルト教団の信者ではなく純粋に金欲しさにさらわれた少女である。また、教団が暮らす島では農作物の不作や家畜の子どもが無事に生まれないなど不運が続いており、暮らしに窮している。教団のトップたちは潜入したスパイを拷問したり殺したりするが、それは神の教えに背く不信心者に罰を下すというよりは、島での暮らしを守るため、自分たちがトップに君臨する社会の秩序を守るためだ。信者たちは戒律に縛られてはいるものの、特に狂信者めいた姿を見せることはない。

 中盤で島で行われていることが明らかにされるが、これには少しびっくりした。こういう話だったのか……しかし、興味深いのは人ならざる存在を虐げているのもまた人間だということ。この映画、徹頭徹尾、悪事は人間が行う。それも権力が欲しい、子どもの交際相手が気に食わない、などあまりにも人間らしい理由から。そこに宗教はもはや関係ない。宗教は、あの女神と同じく、人を支配するために利用されているだけだ。

 そしてあの結末は、失われていた信仰心の復活の象徴のようだ。自らの流した血が恵みに変わる、何とも安らかなシーン。というわけで、本作は「宗教は怖い」映画どころか、実は「信仰を取り戻す」映画なのだった。

 

ちなみに

 

・監督ギャレス・エヴァンズといえばもちろん「ザ・レイド」を作った人なのだが、「V/H/Sネクストレベル」で最恐の呼び声高い” Safe Haven”を撮った人でもある。「アポストル」でも見るからに痛そうで邪悪そうな装置を使いむごたらしいことが行われる「ひいいいいい」なシーンがあるが、その片鱗は既にこの映画に見られると思う。

 

www.youtube.com

(これは英語版予告編だよ!英語版予告編は絶妙な感じで編集されているのだが、日本語版予告編は「見せない方がいいんじゃないかなー」というところを見せてしまっているので見ない方がいいと思うよ!)

 

・最後まで見ても何が「復讐の掟」なのかはわからないんだぜ!ちなみに原題はシンプルに「Apostle」だよ!