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映画についてのいろいろな話。

やっとの思いで自分を癒して生きていく。「愛してるって言っておくね」

Netflixで「愛してるって言っておくね」を観た。

※ネタバレがあります。

 

 

予告編

※日本語版がなかったため英語版で。

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あらすじ

ある夫婦が会話もなく食事をし、洗濯をし、TVを見る。ふたりの心が離れてしまったのにはある悲しい理由があった。台詞なし、12分の短編アニメーション映画。

 

感想

 喪失は人を結びつける、べきだ。ふたりの人間が同じものを失ったなら、ふたりはお互いの話に耳を傾け、労わりあい、慰めあい、ゆっくりと日常を取り戻して、前に進んでいく、べきだ。

 そうである「べき」なのだが、しかし、そうすることは時に、あまりにも難しい。この映画の描くふたりのように、あまりにも惨い形で、あまりにも大切なものを失ってしまった時はなおさらだ。

 こんなふうになってしまった誰かを見た時、人は言う。「あなたが失ってしまったあの人は、こんなことは望んでいない」と。この映画にもそれを表すシーンがある。ふたりが失ってしまった大事な人の魂は、離れていくふたりの心をどうにか繋ぎ止めようと懸命に両手を伸ばし、はてには地面を折り曲げてまで、無理やりにでもふたりを近づけようとする。やがて抱きしめ合うふたりの魂の間には、失われてしまったあの子がいる。

 ずっとずっと昔から、こういう理不尽な喪失に人は直面してきて、それでもどうにか先に進まなければならなかったので、自分に言い聞かせてきたのではなかっただろうか。「あの人は、こんなことは望んでいない」と。そしてやっとの思いで自分を癒して生きていく。そのプロセスを12分間という短い時間で見せてくれる、そんな映画だった。

 

ちなみに

ローラ・ダーンがエクゼクティブ・プロデューサーに名を連ねている。

 

・同じテーマを扱った作品では「ダンブレーンからの手紙」もNetflixで観られる。ある恐ろしい悲劇に見舞われたイギリスの田舎町ダンブレーンの神父が、16年後、同じ悲劇に襲われたアメリカの神父に手紙を出す。悲劇の爪痕の深さを垣間見せてくれるドキュメンタリー。

 

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