映画を観る準備はできている。

映画についてのいろいろな話。

毎日別人になるあなた「エブリデイ」

※ネタバレがあります。

 

予告編

日本語版は見つけられず。

英語版はこちらですがけっこうネタバレかも。カットされたシーンがけっこう入っている。鑑賞後に観ることをおすすめします。

 

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あらすじ

 

デビッド・レビサンの小説「エヴリデイ」を実写映画化したSF青春ラブストーリー。毎朝違うティーンエイジャーに憑依して目を覚まし、毎日違う人生を送る霊体“A”。ある日、16歳の高校生ジャスティンに憑依したAは、彼の恋人リアノンに恋をする。その後、カトリック信者ネイサンに憑依したAはリアノンに思いを告白。さらに数日後、Aは手紙でリアノンを呼び出し、自分の正体を打ち明ける。毎日違う人物になって現れるAに違和感を抱きながらも、交流を深めていくリアノンだったが……。ヒロインのリアノン役に「ナイスガイズ!」のアンガーリー・ライス。共演に「名探偵ピカチュウ」のジャスティス・スミス、「20センチュリー・ウーマン」のルーカス・ジェイド・ズマン。監督は「君への誓い」のマイケル・スーシー。(映画.comより引用)

 

 

 

感想

 

 リアノンの母親役はマリア・ベロジャスティン役はジャスティス・スミス(「名探偵ピカチュウ」は未見なので私にとっては「ジュラシック・ワールド 炎の王国」のスクリーム担当さん)、Aが乗り移る体の持ち主ジェームズ役でMCUの「スパイダーマン」の相棒ネッドことジェイコブ・バタロンも顔を出し、脚色は「ぼくとアールと彼女のさよなら」の原作者兼脚色のジェシー・アンドリュース、となかなかに豪華な面々が、デイヴィッド・レヴィサンの「エヴリデイ」を映画化。毎朝起きると違う人間になっていて、24時間限定でその人として暮らす、という生活を生まれてこのかたずっと続けているAという存在を、どうやって映像化するのかな、たとえば誰か一人にナレーションさせたりとかするのかな、などと観る前に思ったが、潔くいろいろな俳優に一人の人物を演じさせるというやり方を採用している。この映画ではリアノンの視点で物語が進むが、原作ではAの視点で物語が語られるので、けっこう受ける印象が違う。映画でも触れられている通り、いろいろな体で人生を経験するAは自らを男だとも女だとも思っていないので、字幕(今回は字幕で観ました)にもそれを反映させて、俗に言う「女言葉」「男言葉」はしゃべらないようにしてほしかったなあ、と思う。原作小説の日本語翻訳はその点ちゃんと考えられていて絶妙な言葉遣いになっていたという印象がある。

 

原作小説はこちら!

honto.jp

 

 

 実は原作小説で重要な要素になっているものが、この映画版ではばっさりと削除されていて、映画版ではAとリアノンの関係に焦点を当てた作りになっているのだが、これはこれでありじゃないかな…と思う。ふたりがダンスしたり、水族館に行ったり、一緒にシャボン玉を作ったりする場面はきらきらしていたし、その後もふたりが繋がりを持っているということを暗示するラストの処理も、なるほどと思った。

 

ちなみに

 

・Aが乗り移ったトランスの男の子とリアノンが会話する短いシーンがある。このトランスの男の子を演じる俳優が印象的だったので調べてみたところ、この人はイアン・アレクサンダー。トランスジェンダーで、ノンバイナリーであることをカミングアウトしている。ゲーム「The Last of Us Part II」でもトランスジェンダーのLev役を演じ、「スタートレック:ディスカバリー」では「スタートレック」史上初のトランスジェンダーのキャラクター、Gray役を演じ、トランスジェンダーであることをオープンにしているアジア系アメリカ人として初めてテレビ出演した人物となった。ちなみにまだ二十歳。

 

deadline.com

 

 

とにかく明るい青春ホラー「ザ・スイッチ」

※ネタバレがあります。

 

予告編

 ちょっと間違ってる気がするけど…(ミリーは殺されてはいないからね…)

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あらすじ

「透明人間」「ゲット・アウト」などホラー、サスペンスの話題作やヒット作を数多手がけるジェイソン・ブラムが製作、「ハッピー・デス・デイ」シリーズのクリストファー・ランドンが監督を務め、気弱な女子高生と連続殺人鬼の身体が入れ替わってしまったことから巻き起こる恐怖を描いた異色ホラー。家でも学校でも我慢を強いられる生活を送る冴えない女子高生のミリー。ある夜、アメフトの応援後に無人のグラウンドで母の迎えを待っていた彼女に、背後から指名手配犯の連続殺人鬼ブッチャーが忍び寄る。鳴り響く雷鳴とともにブッチャーに短剣を突き立てられたミリーだったが、その時、2人の身体が入れ替わってしまう。24時間以内に入れ替わりを解かなければ、二度と元の身体に戻れない。ミリーは新たな殺戮を企てるブッチャーを相手に、自分の身体を取り戻そうとするが……。「名探偵ピカチュウ」「スリー・ビルボード」のキャスリン・ニュートンがミリーに扮し、ブッチャーと入れ替わり後は手当たり次第に殺戮を企てる殺人鬼を熱演。一方、中身は女子高生で自分の身体を取り戻そうするブッチャーをビンス・ボーンが演じた。(映画.comより引用)

 

 

 

感想

 最初のブッチャーが若者たちを殺していくシーンから、ホラーファンとしてはいいね!となる。殺し方がそれぞれにエグい。エグくてオリジナリティにあふれている。あなたはホラー映画の殺しにオリジナリティを求めるタイプのホラーファンですか。私はそうである。前置き無しでいきなり殺戮シーンから入るのもいいね!

 しかし青春ホラーって、あまりにも主人公の周りの人たちがいい人過ぎると、殺された時に「いやーやめてー」となりませんか。この映画にも主人公と親友二人、主人公の片思いの相手、主人公の家族、などなどいい感じのキャラクターが多数出てくるのだが、「い、いや、まさかこの人たちが無残に殺されるなんて…そんなのやめてー」と思いながら見ていた。でも大丈夫。主人公は冴えないいじめられっ子なため、これまで主人公をいじめてきたイヤーな教師とか、イヤーなクラスメイトとか、イヤーな男子生徒とかがかわりに殺されてくれます。これで殺される人数が確保され、人が殺されてもそこまで嫌な気持ちにならず、なおかつ主人公周りのキャラクターを応援しながらこの映画を楽しむことができるのです。作り手はよくわかっていらっしゃる。

 個人的にはヴィンス・ヴォーンの女子高生演技にはちょっと誇張され過ぎじゃね?と感じこれ↓を思い出してしまった。まあこういうシチュエーションならこれくらい大げさな方がいいかもしれないんだけどね。

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 ラスト、よくある入れ替わりものなら「実は元に戻ってなくて…」殺人鬼が実は生きていた系なら「家族が皆殺しにされ主人公も捕まって…」みたいな絶望的なエンディングばかりが頭に浮かんでしまい、一体どうやって終わらせるのかな…と思っていたのだが、見せられてみたら「うんこれしかないよね!大正解!」なエンディングでよかった。ミリーは大柄な成人男性という「肉体的な強さ」を経験したわけだけど、でもこのエンディングで描かれているのは彼女が身に着けた「精神的な強さ」がそれに打ち勝つ姿であり、内気で引っ込み思案だった女の子が「私にもできる」という自信を手に入れる姿であって、これぞ正しい青春映画の在り方だと思いました。

 

ちなみに

 

・「黒人とゲイじゃ絶体絶命!」

 メタな台詞である。ジョシュ君…

 

・「話すのは早いと思ったけど…女性が好きだ」

 「それだけは絶対にないわ」

 こんなカミングアウトシーン(嘘だけど)見たことないぜ。ジョシュ君...。

 

・今作で実に生き生きとジョシュを演じているミシャ・オシェロヴィッチだが、実はここに至る道は平坦なものではなかった。こちらのインタビューでは十五才の時、夜中に両親の雇った二人の筋肉質の男性によって何の説明もなしに家から連れ出され、青少年の矯正施設に連れて行かれた(!)体験について語っている。ミシャはノンバイナリーをカミングアウトしており、現在自伝的な作品に取り組んでいるとのこと。幸運を。

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だからリスペクトしろって言っただろ!「ズーム 見えない参加者」

※ネタバレがあります。

 

あらすじ

 

パンデミックのためロックダウン中のイギリス。ヘイリーたちは霊媒師を招き、Zoom交霊会を行う。最初は楽しかった儀式は、しかしやがて異変を招く。

 

感想

 今や大多数の人が一度はZoomを使ったことがあるのではないだろうか。Zoomはとても便利である。遠くにいる人とも顔を合わせて話すことができる。しかしその便利さゆえに悲劇をも生んできた。たとえばZoomでリモート裁判(!)中の弁護士が、猫フィルターを外すことができず、「私は、……私は猫じゃないんです……!」と訴える羽目になる、などである。

 

 ちなみにこちらがその映像だ!↓

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 本作で描かれるのはZoomで交霊会(!)をしてみたら、参加者の一人が霊へのリスペクトに欠けた行いをしてしまったがためにとんでもないことになるありさまである。教訓。人にはリスペクトを持とう! 霊にもリスペクトを持とう! 一度うっかり邪悪な霊に失礼なことをしてしまったが最後、ヘイリーたちには何をどうすることもできない。一番ヒドイ目に遭わされるのはしょっぱなから彼女に呼ばれて脱落したテディだと思うが、この人に至っては交霊会でどんなことが起こったのか見ていないため、何が何だかわからないうちにけっこう凄い目に遭わされてしまうのでかわいそうである。Zoomで繋がってはいても実際にいる場所は遠く離れているため、あなたは誰も助けることはできないし、誰もあなたを助けることはできない。それを一番感じたのがこのケースでした。霊はひっそりと存在を感じさせたり、姿を見せずに襲ってきたり、カメラの顔認証に反応するとか、椅子を突然凄い速さで引くとか、いろいろと頑張ってくれるのだが、その怖がらせっぷりは日本版予告編でけっこう映ってしまっているので、予告編は見ずにいきなり本編を観た方がいいと思う。一時間ちょっとというコンパクトさで、ぎゃあぎゃあ言っているうちに終わります。面白かったし怖かったよ!

 

ちなみに

 

・監督ロブ・サヴェージの短編作品はいくつか本人の公式HPのWORKで観られます。

 

www.rob-savage.co.uk

 

 

そこで観られる“DAWN OF THE DEAF”が面白いので貼っておきます。ぜひこのアイデアで長編化してほしい。「ズーム 見えない参加者」のヘイリー、ラディーナ、キャロラインも出演。

※性加害描写があるので注意!

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子どもを守ろうとする母。しかし二人を襲うモンスターが!頼りになるのは塩で描いたサークルだけ!というワンアイデアわずか2分間の短編”SALT”も見ごたえあり。

 

www.rob-savage.co.uk

 

 

少女の誤解が悲劇を生む、南アフリカのバンドDear Readerの”Took Them Away”という歌のミュージックビデオも歌声の物悲しさと相まって一編の短編映画を観ているよう。

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オンラインで観られる!短編ホラー映画8選

最近体調が悪く長編映画を観る元気がない。そんな人はいないだろうか(私です)。

そんなあなたに贈る、YouTubeなどの動画サイトで手軽に観られる短編ホラー映画リストです。全部、一度は観てほしい面白い映画ばかりです。リンクもあるよ。

 

Selfies Gone Wrong

 

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監督Bradley Walkowiak

セルフィーを撮るのが大好きな女性が、写真を見直していてある恐ろしい事実に気づく。3分未満という短さで見事にぞっとさせてくれる、「絶対現実に起こらない」とは言い切れない恐怖を描いた一編。

 

Pictured

 

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監督デヴィッド・F・サンドバーグ

不審な物音。廊下に飾られた写真に起きた異変。そして…監督デヴィッド・F・サンドバーグ&女優ロッタ・ロステン、ホラー短編映画界を代表する夫婦のタッグで贈るお手本のような短編。高まる緊張感に最後のショック!

 

ROOM8

 

www.shortoftheweek.com

 

監督James W. Griffith

奇妙な箱を使って牢獄から逃亡しようとした男の末路。「トワイライト・ゾーン」にありそうな奇妙な味の一編。

 

INTRUSION

 

www.shortoftheweek.com

 

監督Jack Michel

「誰かが家の中にいる、と思う」――手持ちカメラのリアルな映像で記録された、あるホーム・インベージョン。7分程度の短さで緊迫感、恐怖、驚きを味わわせてくれる。

 

THE APOCALYPSE

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監督Andrew Zuchero

○○したら死ぬ!?未だかつてないほど死へのハードルが低く、こんなもん避けようがないだろ!と言うしかないアポカリプス。あえてどういうふうに死ぬかは言わないのでインパクトある死亡シーンをご覧ください。6分もないのに景気よくばんばん人(動物も)死にます。

 

Munchausen

 

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監督アリ・アスター

みんな大好きアリ・アスターによる短編映画。息子を溺愛する母親。しかし大学進学によるふたりの別れが近づいていた。そこで母は…やーめーろーよーとしか言えない悪趣味なストーリーがメルヘンチックな雰囲気の中で進むぜ!

 

El Ciclo

 

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監督ビクター・ガルシア

ゴミ袋に包まれた何かを捨てる男。血しぶき。銃。剃刀。そして…「な、なにい!?」驚きの運命が男を襲う!ちょっとこれ他にあんまり見ないような味わいの話です。ぜひ一度見てほしい。ちなみにタイトルはスペイン語で「周期、サイクル」という意味です。

 

Nose Nose Nose Eyes!

 

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監督Jiwon Moon

女の子と母親が楽しげにおしゃべりしている。ふたりは一見幸せそうな親子だ。しかし徐々に不穏な秘密があらわになっていく……最初の不穏なシーンから13分という長さで恐怖や痛みなど様々な感情を味わわせてくれる。母親の着ている緑のワンピースや金色のカーテンなど、映像的にも美しい。監督はまだ長編作品がないようなのだが撮ってくれたら絶対観たいぜ。

「若旦那はザンネン。」がアセクシュアルの登場する漫画として素晴らしかったところを挙げてみるよ。

※コミック「若旦那はザンネン。」のネタバレがあります。
 
かつて二度ほどアセクシュアルが登場する作品について書いたことがある。残念ながらどちらも作品を褒めたものではなかった。いろんな理由で褒められたものではなかったからだ。どちらも作品について何かを言わずにいるということを選択できるようなものではなかった。書いてて本当に残念である。
 
これ(通称:激怒ブログ、この漫画にはマジにマジで怒りしかない)↓
そしてこれ↓(上の漫画ほど酷くはないが(正直あれより酷いものはなかなか描けないと思う)しかし読んでいてハッピーにはならない漫画である)
しかし!私はアセクシュアルのレプリゼンテーションとしておすすめできる漫画に出逢ってしまった。ここまできちんとしたものを見たのははじめてである。これは声を大にしておすすめしたい!!というわけでふせったーで感想を書いたのだが、もっと見えるところに置きたいな、と思ったのでブログにも載せようと思う。
 
その漫画のタイトルは「若旦那はザンネン。」という。
 
私はかつて「私が考えた最強のアセクシュアル漫画」の条件を書いたことがある。これ↓だ。

1.その人物がアセクシュアルであることが明示される。

 理由はおわかりだろう。だってはっきり言っとかないと「この人はまだいい人に出会ってないだけで当然セクシュアルだよな」って思われるからだ!

 2.その人物のアセクシュアリティは物語の主題とはならない。

 フツーにアセクシュアルの人物がSFとかアクションとかミステリーに出てくるのを見たいんですよ私は。

 3. アセクシュアリティは特にその人物を苦しめてはいない。

 「マイノリティがマイノリティであるがための苦しみを味わう物語」の次に来る物語の話ですからね。アセクシュアリティ=不幸という呪いをかけないでほしい 。
 
「若旦那はザンネン。」はこの条件を満たしているか?

1.クリア。
主人公しのぶが、心を許したセイさんに「昔から人を好きになったことがない、好意を抱いても恋愛感情にならない」と打ち明ける→セイさんがそれに対して「それはたぶんアセクシャルというやつですかね」と返す→しのぶがその呼び名に納得する様子を見せるという流れでしのぶのアセクシュアリティが明示されている。

2.クリア。
しのぶのアセクシュアリティがテーマとして描かれるエピソードはあるが、作品全体のテーマは商店街の活性化である。

3.クリア。
しのぶのカミングアウトの後の会話で、しのぶは自身にとっての幸せを「自分の店でお茶を飲んで一人でも多くの人がお茶を好きになること、商店街がもっと繁栄すること」と語っている。いずれも彼のセクシュアリティとは無関係である。事情を知らない妹に恋人がいないことをからかわれたり将来を心配されたりはしているものの、そのことに過度に苦しんだり、自分が人に恋愛感情を抱けないこと自体を問題視したり、そのことに苦しんでいる描写はない。

全部クリアですよ。たった三つの条件だけど、アセクシュアルをテーマにしていて話題になった作品がこのたった三つの条件を満たしていない、それも2&3は特に思いっきり破っているところを何度か目の当たりにしている身としては、全部クリアなのがすごくうれしい。

そしてそして、更にボーナスがある。
カミングアウトシーンで、「たとえ誰かが自分を好きになっても、自分が同じように相手を好きになることはないので、相手は幸せになれない。だから誰とも付き合ったり一緒になったりする気はない」としのぶが言うところがある。しのぶがこれから誰かと付き合おうが付き合うまいが、それは彼の決断であり、その決意の表明には何も悪いところはない。しのぶはそうだ、というだけなのだ。でも私はここを読んで、「うん、しのぶがそうなのはいいんだよ、でもねでもね、世の中にはそうじゃないアセクシュアルの人もいてね」と言いたくなってしまった。くわしい説明はこちらを↓見てほしいのだが、パートナーと生きることを選択するアセクシュアルもいるからだ。
 

herve-guibertlovesmovies.hatenablog.com



しかし、作者、小池定路先生は裏切らなかった。カミングアウトシーンの直後ではないものの、後のエピソード間のおまけページに、「お互いの理解を得た上でパートナーの方と家族として暮らしている無性愛者の方もおりますことを追記しておきます」と書かれているのである!
しのぶの生き方をまったく否定せず、でも他の生き方を選ぶアセクシュアルもいるということをちゃんと追記。ちゃんと描く対象について調べていて、なおかつリスペクトが込められていることを、この追記から感じた。

こういう物語が描かれるのを待っていました。こんなにちゃんと描いてあるよと、皆に言って回れるものが、他のテーマではたくさん描かれているものが、アセクシュアルについても描かれるのを待っていました。

コメディタッチで、でも働くこと、生きることを真摯に描き、涙が出るようなやさしさがあふれている、いいものを読ませていただきました。「若旦那はザンネン。」全三巻、推しですぞ。
 
 

早くこいつを食ってくれええ「リトル・モンスターズ」

 

 

※ネタバレがあります

 

予告編

 

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あらすじ

「アス」「ブラックパンサー」のルピタ・ニョンゴ主演によるゾンビコメディ。冴えないミュージシャンのデヴィッドは、恋人に浮気されて姉の家に転がり込む。甥が通う幼稚園の先生キャロラインに一目ぼれした彼は、自ら志願して甥の遠足に同行することに。遠足中、子ども向けテレビ番組の司会者テディ・マクギルに遭遇し、子どもたちは大喜び。そんな彼らの前に、突如としてゾンビが現れ……。共演に「アナと雪の女王」シリーズでオラフの声を務めるジョシュ・ギャッド、「エイリアン コヴェナント」のアレクサンダー・イングランドヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2020」上映作品。(映画.comより引用)

 

感想

 

まず、上記のあらすじは間違っている。デヴィッドは恋人に浮気されたのが原因で姉の家に転がり込んだのではなく、恋人と喧嘩になって姉の家に転がり込み、その後部屋に戻って恋人の浮気現場を目撃するのである――恋人を懐柔する道具にしようとたたき起こして連れてきた幼い甥っ子と一緒に。

最初の三十分間くらい、デヴィッドはこんな感じである。甥っ子のアレルギーを「ただの好き嫌いだろ」(なんという邪悪な言葉だろうか)と言い、甥っ子の幼稚園の先生が美人だったのでひとめぼれし、彼女が写っている幼稚園の集合写真を見ながら××をする(なんかもう文字に起こしたくもないので伏字である)など、お前には人の心があるのか? と疑いたくなるような振る舞いの連続で、もはや気持ち悪くなるレベルであり、筆者はすっかりこの主人公が嫌いになって、出でよゾンビ! とっととこいつを喰ってくれえ! という気持ちになった。

で、ゾンビが出てきたら改心して活躍するのかなあ(それより喰われてくれ)と思っていたら、それほどデヴィッドは役に立たない(やったね)。最後少し役に立ったが、あれはどちらかといえば甥っ子君の手柄である。しかしそれでもデヴィッドがマシな人間に見えるようになるのは、デヴィッドに輪をかけてクズもクズなジョシュ・ギャッドがはじけたクズっぷりを見せてくれるからで、特に自業自得でしかない退場シーンはストレスが解消された。いいモツであった。

人が喰われる場面はそれほど多くはないが、ゾンビのメイクには力が入っていて、画面に映るとけっこう怖い。そして何より数が多いのがいい。ルピタ・ニョンゴがシャベルで無双するシーンはもっと見せてくれてもいいのよ。

 

ちなみに

 

作中でウクレレを弾きながらテイラー・スウィフトのShake it offを歌っているルピタ・ニョンゴだが、そもそもニョンゴがこの映画に惹かれた理由の一つがShake it offが使用されていることだったとのこと。ニョンゴはこの歌が大好きだそう。曲を使用する権利がなかなか取れなかったので、仕事が厳しくて落ち込んでいる時、親友がこの歌をスマホで流し、ベッドルームで二人して踊ったというエピソードをテイラー・スウィフトその人に書いて頼んだところ、使えるようになったそうだ。

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話など通じない。「コンジアム」

 

 

※ネタバレがあります。

 

予告編

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あらすじ

CNNが選出した世界7大心霊スポットにも数えられた実在の廃病院「コンジアム精神病院」を舞台に、忌まわしい場所に足を踏み入れた若者たちの運命をPOV形式で描いた韓国製ホラー。YouTubeで恐怖動画を配信する人気チャンネル「ホラータイムズ」が一般参加者を募り、数々の都市伝説を生んだ心霊スポットであるコンジアム精神病院からのライブ中継を計画する。主宰者ハジュンを隊長とする7人の男女は、いくつものカメラやドローン、電磁検出器といった機材を持ち込み、深夜0時に探索を開始。ハジュンが仕掛けた演出も功を奏し、サイトへのアクセス数は順調に伸びていくが、次第にハジュンの想定を超えた怪現象が次々と起こり始める。キャストに小型カメラを装着して大半のシーンを彼ら自身に撮影させるという手法をとり、リアリティと臨場感を追求した。(映画.comより引用)

 

感想

 筆者はホラー映画が好きである。しかしホラー映画の中にも苦手な分野があり、本作「コンジアム」は実はその分野のど真ん中に位置する。要するに心霊ものが苦手なのだ。理由は怖いから。いやいや怖いの見たくてホラーを観るんでしょ、と思われるかもしれないが、たとえば殺人鬼が襲ってくるスラッシャー系であれば狙われている主人公側が反撃することも可能だし、それが物語のカタルシスにつながる場合もある(「サプライズ」がいい例だ)。同じく幽霊だの呪いだのが出てくるホラーでも、「この霊はその昔恋人と引き離されたことに恨みを抱いて暴れているので恋人の骨と一緒に葬ってやれば鎮まるはず」みたいな、「対処法がある」ものであれば面白く観ることができる。しかし!本作「コンジアム」はちがう。「コンジアム」に出てくる「ものたち」は、そもそも誰なのか、なぜ人を襲うのか、なぜこの世に留まっているのか、何もはっきりとは語られない。ただコンジアムに足を踏み入れたものに、何も要求せず、何も語らずに襲いかかる、それだけだ。この種の亡霊に当たったらどうすればいいのですか。どうにもしようがない。悲鳴を上げて逃げ回るしかない。だから怖いのである。だから苦手なのである。

 個人的にジヒョンが変貌するところとシャーロットが白い人を見るところが「いやあああああ」ポイントであった。シャーロットが白い人にライトの光を当てるんだけど、わかる。見えたら怖いんだけど見えないのも怖いんだよ。だからいわくつきの精神病院なんかに足を踏み入れるものじゃありません。絶対肝試しなんか行かないからな!

 

ちなみに

 

・「韓国ホラー歴代二位の興行収入」と宣伝されている。ちなみに一位は「箪笥」だそうである。

 

↓これは私の「箪笥」感想だよ!よかったら見てね!

herve-guibertlovesmovies.hatenablog.com

 

・役名はみんなそのキャラクターを演じる俳優の名前と同じである。

 

・公式サイトを見るとキャストの一人、イ・スンウク氏の紹介が何やら意味ありげな感じになっているが、これは彼が「コンジアム」を最後に活動を中断しているからと思われる。本人はこのように↓語っているようなので、そっとしておいてあげてほしい。

 

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